e進数ふたたび
はじめに
数を表記するのに効率の良いのはどういう方法かということについて考えて見ます。
1、2、3、4、5…といった自然数を基本とした数が多くの場面で使われています。十進数以外には、二進数や十六進数などもコンピュータとの整合性の良さから使われています。
これ以外の方法はあまりなさそうではあるのですが、数の表記というよりも何かの大きさを表す方法と考えると何か見つかるかもしれません。
等差数列と等比数列
次の表を見てください。上は通常の自然数の表記で、1から等間隔で並んでいます。
下の段は別の意味で等間隔に並べた表記です。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
1.3 | 1.6 | 2.0 | 2.5 | 3.2 | 4.0 | 5.0 | 6.3 | 7.9 | 10 |
グラフにするとわかりやすいと思います。まず、通常の方法のグラフ。
これを見ると、自然数が等間隔で並んでいることが見た目で理解できます。もうひとつの方がが等間隔で無いことも。
では、こちらのグラフはどうでしょう。
こっちだと、自然数は等間隔でなくなってしまったかわりに、もうひとつの表示が等間隔になりました。
これは、対数目盛をつかったグラフです。
じつは、対数目盛で等間隔にになっている数字の表記は、差が一定でなく比が一定になるように選んだ数なのです。
こういった等差数列が使われている場面というのは、案外とあります。
電子回路に使われている抵抗器やコンデンサなどの値は、その比が一定になるように決められています。音楽の音階もそうです。周波数の差ではなく比が、音程や和音に重要だからです。
音楽などをデジタルデータにして記録する場合にも、この方法が使われる場合があります。直線量子化でなく、非直線量子化や対数量子化と呼ばれる方法です。こうすると、信号とノイズの割合が一定に抑えられるという利点があります。
有効数字というのも、等比的な考え方といえます。長さを測るのに、1ミリ単位で測定するのが通常の方法だとすれば、誤差を1%にするようにするのが有効数字を使った方法です。
1ミリ単位で測定する場合、1メートルを測定した場合に1ミリの誤差があったとすれば0.1%ですが、1センチで1ミリの誤差は10%と、誤差は一定しません。だから誤差を一定におさめたい場合には、いわゆる通常の方法は使えないわけです。
直感的な説明
等比的な数というのは、実際に使わているし、対数という形での表記も存在します。それをもう少し直感的に理解できないかということを考えてみました。
小学校などで、数を理解するためにオハジキやタイルのような物を使います。オハジキを並べた数によって、数という物を感覚的に理解させようということなのでしょう。
それを真似してやってみます。四角い方が後の説明に都合が良いのでタイルを使います。
タイルの数でいえばどちらも6枚ですが、ここでは縦に並べた数をベースとして、横に並べた数だけかけた数を表すと定義します。
上の場合は、縦2個が、横に3組ならんでいるので2を3回かけます。
2×2×2=8
つまり8を表しています。
下は、3をベースにして2回かけるので
3×3=9
で9を表します。
ベースとする数の違いは、通常の数で二進法や三進法、十進法など何進法なのかという違いに相当します。
上の図の2種類では、2をベースにした場合より3をベースにした場合の方が大きな数を表せます。しかし、2をベースにした場合は、1組から3組までの3通りの数を表わせるのに対して、3をベースにした場合は2通りの数しか表せません。
そこで少し工夫します。
タイルの面積は変えずに、縦と横の比を変えました。こうすると、どちらの場合でもタイルの枚数に応じただけの数を表記できます。
2をベースにしたタイルが1つの場合は2の1/2乗、2つの場合は2の1乗、3つなら2の3/2乗した値が対応します。
3をベースにした場合でも同じで、タイルがn個の場合に3のn/3乗を表します。
この方法ならば、タイルの縦と横の比を変えることで好きな数をベースにすることが可能です。2や3といった自然数だけでなく少数、分数に無理数でも可能です。
例としてeやπをベースとする場合のタイルでも可能だということを示してみます。
以下に、具体的にいくつかの数をベースに選んだ場合に表記される値を計算した結果をまとめました。これを見ると、同じ個数のタイルを使ってもっとも大きな数をあらわすことが出来るのはeをベースにした場合だというのがわかります。
2 | 3 | 4 | 5 | 10 | e | π | √2 | √8 | 100 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.3 | 1.4 | 1.4 | 1.3 | 1.4 | 1.0 |
2 | 2.0 | 2.1 | 2.0 | 1.9 | 1.6 | 2.1 | 2.1 | 1.6 | 2.1 | 1.1 |
3 | 2.8 | 3.0 | 2.8 | 2.6 | 2.0 | 3.0 | 3.0 | 2.1 | 3.0 | 1.1 |
4 | 4.0 | 4.3 | 4.0 | 3.6 | 2.5 | 4.4 | 4.3 | 2.7 | 4.4 | 1.2 |
5 | 5.7 | 6.2 | 5.7 | 5.0 | 3.2 | 6.3 | 6.2 | 3.4 | 6.3 | 1.3 |
6 | 8.0 | 9.0 | 8.0 | 6.9 | 4.0 | 9.1 | 8.9 | 4.4 | 9.1 | 1.3 |
7 | 11.3 | 13.0 | 11.3 | 9.5 | 5.0 | 13.1 | 12.8 | 5.6 | 13.1 | 1.4 |
8 | 16.0 | 18.7 | 16.0 | 13.1 | 6.3 | 19.0 | 18.4 | 7.1 | 18.9 | 1.4 |
9 | 22.6 | 27.0 | 22.6 | 18.1 | 7.9 | 27.4 | 26.6 | 9.1 | 27.3 | 1.5 |
10 | 32.0 | 38.9 | 32.0 | 25.0 | 10.0 | 39.6 | 38.2 | 11.6 | 39.5 | 1.6 |
以前に書いたもの。
e進数