一酸化炭素中毒

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080323-OYT1T00243.htm?from=main3のニュース「苫小牧の7人CO中毒死、遺族が製造元を提訴へ 社会 YOMIURI ONLINE(読売新聞)」に関して。

 北海道苫小牧市のアパートで2006年、メーカーが自主回収中だった石油ファンヒーターを使用し、幼児を含む7人が不完全燃焼による一酸化炭素(CO)中毒で死亡した事故を巡り、遺族が製造元の「トヨトミ」(本社・名古屋市)を相手取り、総額約8000万円の損害賠償を求める民事訴訟を近く札幌地裁に起こすことを決めた。

 提訴するのは、事故で娘と孫を亡くした北海道日高地方の女性(58)ら遺族2人。一家は、廃棄されていたヒーターを再利用していた。トヨトミは「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。

(2008年3月23日10時22分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080323-OYT1T00243.htm?from=main3


「訴状を見ていないのでコメントできない」というのは定番のコメントではあるのですが、今回の場合はまだ提訴されてもいません。だから訴状も存在すらしないわけで、見ていないというのは間違いではないにしろ変な感じを受けました。

訴訟を起こすことに関しては万人にその権利があるというのが前提としてあります。だから他人から見て変な裁判であっても、当事者が起こしたいと思えばそうすることはできるし弁護士などは依頼人の要望にこたえるのがあるべき姿だと思います。その点では何も問題はありません。
それを踏まえたうえで、この記事を読んで思ったのはどうにもおかしな裁判だというものです。

ところで、廃棄されていた石油ファンヒーターを拾ったのは中毒死した人ではなくその親類だそうです。

苫小牧市のアパートで昨年12月、7人が一酸化炭素(CO)中毒死した事故で、不完全燃焼を起こした石油温風機は拾ってきた廃棄物だったことが12日、苫小牧署の調べで分かった。業務上過失致死傷容疑でメーカーや使用者を立件するのは困難になった。

 調べによると、温風機は死亡した女性の親類が拾い、譲ったとみられ、入手経路の裏付けを急いでいる。

http://hokkaido.nikkansports.com/news/f-hn-tp6-20070112-141462.html


この温風器を拾って譲った親類と、訴訟を起越す予定の遺族は重なるんだろうかと思いました。事実関係としては不明で、全然別であるかもしれないし、同じ人が温風器を拾って訴訟を起こすのかもしれません。
それを踏まえたうえで、もし温風器を拾った人と訴訟を起こす人が重なるとしたら、その行動に関して少しは理解できるような気がします。
まず拾ったもので事故が起きた場合に、その原因がなんであっても「どうしてそんなものを拾ったんだ」というような思いは生じるでしょう。今回の場合はメーカーが回収しているような問題のある機種であったわけで、その点でも何でそんなものを拾ったんだという思いが強くなります。
これが自分で拾って、自分が事故を起こした場合はまあしょうがないとも思えます。それに今回のように死んでしまった場合なら、ことさら死者の責任を問おうともしないような気がします。でも今回の事件では拾った人と死んだ人は別です。だから拾った人の責任を問おうと思えば、問うこともできます。といった状況で、温風器を拾った人がメーカーの責任を問う訴訟を起こすとしたらその内面をある程度想像することもできるような気がします。責任逃れというと言葉は悪いですが、メーカーや他の誰の責任でもないとすれば自分の責任になるからです。これは法的な責任というよりは道義的な責任でしょうが、7人が死亡した責任を我が身に受けることは出来る限り避けたいと思うのではないでしょうか。


(追記)
以下の記事によると訴訟を起こしたそうです。提訴した人と、ファンヒーターを拾った親戚について同じ記事で別々に書かれていることから、おそらく別の人なんでしょう。

 北海道苫小牧市のアパートで2006年12月、7人が一酸化炭素(CO)中毒で死亡した事故で、遺族の母親2人が25日、「事故が起きたのは危険性の周知や製品の回収を怠ったメーカーの責任だ」として、製造元の「トヨトミ」(名古屋市)を相手に、総額約8000万円の損害賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こした。
 提訴したのは、長女=当時(5つ)=を亡くした同市の20代女性と、3女=同(25)=を亡くした日高地方の50代女性。
 事故では、トヨトミ製の石油ファンヒーターの不完全燃焼が原因とみられるCO中毒で成人女性2人と子供5人が死亡した。ヒーターは正規に購入したものではなく、死亡女性の親せきが拾ってきた廃棄物だった。

http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=soc_date1&k=2008032500853