正直村と二つの答え

「正直村で二人の人に同じ質問をしたら違う答えが返ってきたの。」
「一人は嘘つき村の人だったんだ。」
「違うの。どちらも正しい答えをしたの。」
「それは興味深い。」
「でしょ。これは私の体験をもとにした話。」
「ということは、偽の仮定で全てが真になるとかいうのではないのか。」
「私は、Aさんに会う為に村に行きました。Aさんと会うのはこれが初めて。」
「ふんふん。」
「待ち合わせの場所の近くでBさんに質問をして回答を得ました。」
「なるほど。」
「次に待ち合わせの場所でAさんにも同じ質問をしました。」
「その回答がBさんのとは違っていたということだね。」
「その通り。さて、その質問と回答は何でしょうか?」


「違う答えというのは、片方は○○であるでもう片方は○○ではないといった形式?」
「うーん。そうそう、『○○ではありません』と『○○です』という答えだったわ。」
「なるほど。質問の答えじゃなければ簡単なんだけど。」
「じゃあ、言ってみてよ。」
「『この文は肯定文である』と『この文は肯定文でない』のどちらも正しい。」
「えーと、あそうか。肯定文であるとすれば肯定文だし、肯定文でないとすれば否定文になるからね。」
「その通り。でも、これは質問の答えとしては不適切だ。」
「『あなたの答えは肯定文ですか』なんて質問はしないものね。」
「もう少しましなものとしては『あなたは男ですか?』のようなものがある。」
「それはAさんとBさんの性別が違う場合の話しね。でも、」
「そんな質問も、普通はしない。これもダメだ。」
「そうなのよ。でもわりといい線いっているかも。」


「AさんとBさんで異なる属性について質問すればいいということか。」
「わあ、ほとんど正解に近い。」
「でも何だろう。学歴、誕生日、血液型、どれもあり得なくはないけど、初対面でいきなり質問するには適切ともいえない。」
「もっと単純に考えた方がいいかも。」
「うーん。ダメだ。わからない。」


「『あなたはAさんですか?』って聞いたの。」