「神狩り」の古代言語とNAND回路

「神狩り」という本に登場する古代言語は通常の言語とは全く違う性質のものとして描写されています。
通常の言語は5種類の論理記号を持っているのに対し、古代言語は2種類しか持たない。そして関係代名詞が13重にも入り組んでいて、人間には理解できないことから人間以外の優れた知性の言語だと推測されています。
論理記号とは∧や¬などのことで、日本語としてなら、ならば、かつ、でないなどがそうです。そして、「AかつBならばCである」のような文を別の言語で表記できることから他の言語も同様の論理記号を持っていることがわかります。この論理記号の数が違うということについて少し考えて見ます。


コンピュータなどに使われるロジック回路も論理記号の一種として考えることが出来ます。複雑な回路もいくつかの基本部品によって構成されているわけです。ロジック回路の基本部品としてはAND回路やOR回路などがあります。AND回路の場合は、入力が全て1のときにだけ出力も1になります。入力が2つある2入力AND回路の場合だと入力Aが1で入力Bも1の時に出力Cも1になるといった具合です。
これを論理記号で書くと
A∧B=C
となります。
OR回路は、入力のどれかひとつでも1になれば出力も1になります。
これは、
A∨B=C
です。
このほかに、入力が0ならば出力は1で入力が1なら出力が0になるインバータ回路もあります。AND回路の出力にインバータを追加したNAND回路や、OR回路の出力にインバータを追加したNOR回路もあります。
NAND回路やNOR回路は、それ1種類だけで他の回路の機能を実現することが可能です。たとえば2入力NANDの2つの入力を接続して1つにすれば、入力が1ならば出力は0で入力が0なら出力が1になるインバータ回路と同じ動作をします。
NAND回路の入力にインバータを追加するとOR回路になります。
これを論理記号で書くと、
¬(¬A∧¬B)=A∨B
となります。


NAND回路の動作を意味する論理記号を考えてみます。単純にNANDとしておきます。
A∧B
と書く代わりに
(A)(B)NAND
のように表記します。
こうすると記号が1つですみます。
NAND回路以外の回路でもNAND回路を組み合わせれば実現できるのと同じように、NAND回路の動作を意味する論理記号だけで記述が可能になるわけです。
しかし記号が1つでも表記は複雑になります。
Aの否定の¬Aは、
(A)(A)NAND
となるし、OR回路のような「AまたはB」は、
((A)(A)NAND)((B)(B)NAND)NAND
のように表記しなければいけません。
記号が少ない分だけ、表記は長くなり入り組んできます。



神狩り (ハヤカワ文庫JA)

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