ログファイル付き宇宙

http://d.hatena.ne.jp/michiaki/20061029#1162091069にある「それぞれが勝手に話を進めるの図」の以下のあたりに関して。

まず、「世界の全てが記されているアカシックレコード」は可能か?ということを考えてみます。世界の大きさが有限なら、不可能でしょう。アカシックレコードが世界内に存在するのであれば、部分と全体の大きさが等しいということは有り得ない以上、「全て」を記録することはできません。それが世界外に存在するのであれば可能かも知れませんが、今度はそれにアクセスすること自体が不可能でしょう。世界の大きさが無限なら……可能なんですかね。どうなんだろう。部分(アカシックレコード)と全体(世界)は濃度が違うんじゃないかって気がします(これは輪王さんの仰っている通りです)。


何かを表記するのには「何か」そのものよりも少ない別の何かがあればできると考えられます。具体的には千個のリンゴを表現するにはリンゴが千個必要ではなく、例えば「千個のリンゴ」と記すればいいだけです。数字に関してはもっと沢山の数を表記する方法もあります。1000の場合は1のあとに0か3個続いていますが、1のあとの0が100個続く数を表記したい場合に0を100個も書かずにすむ方法があります。

\large10^{100}
こう表記すれば1のあとに0が100個続いた数と同じになります。おもしろいことに、この辺のことは有限だけでなく無限の数でも有効です。例えば整数の無限のような可付番無限個の数字を使って表記できる数は、無限の濃度が上がって連続無限になります。
その他の例としては、単純な数式から複雑に見える形を作り出すフラクタル図形などもあります。フラクタル図形では一部を見ることで全体を推測することができます。


アイザック・アシモフの小説「ファウンデーションシリーズ」に登場する心理歴史学は、ある系の動きを予想するのにその系自身よりも単純な系を使うことができる場合があるという原理を利用しています。気体の動きを予想するのに個々の分子の動きを考える必要はないというものです。人間の社会も同じように、個々の人の動きを予想することはできないが、社会全体を予想することができるのが心理歴史学です。


決定論的な立場に立てば、ラプラスの魔ラプラスの鬼と呼ばれる宇宙のある一瞬の状態から過去や未来の全てを計算できる存在もありえなくもありません。ただし、初期条件のほんの僅かな違いが無視できなくなるほど大きくなるカオスと呼ばれる現象の為に、ラプラスの鬼はありえません。でも完全な形で宇宙の初期条件が手に入ったとしたらそこから計算できるかも。宇宙全体をシミュレートするわけです。


順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

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