軌道エレベータ

はてなブックマークの最近の人気記事で紹介されていた、http://journal.mycom.co.jp/news/2003/06/26/15.htmlにある『このエレベーターは宇宙へ参ります! ついに「Space Elevator」建設へ始動 (MYCOMジャーナル)』に関して。実現すれば素晴らしいとは思いますが、以下の部分などはミスリィーディングを狙っているようで感心しません。

大気圏外には約4時間で到達し、エレベーターの最大積載量は5トン。海上プラットフォームと宇宙ステーションを、1年に数百回の往復が可能という。通信衛星や、太陽エネルギーを利用した発電システムといった物資の輸送のみならず、人間を乗せて運行することも計画されており、手軽な宇宙旅行が実現することになるかもしれない。

http://journal.mycom.co.jp/news/2003/06/26/15.html


大気圏外までの距離について具体的に書かれてはいませんが、スペースシャトルなどの軌道から推測すると約100kmといったところでしょう。そこまで約4時間ということは、時速25km。そのままの速度で36000kmの静止衛星軌道まで行くと約1440時間はかかる計算で、これは日数にして約60日です。大気圏外に出れば多少は速度のアップは出来るでしょうが、それほど極端に早くもならないでしょう。そうすると“1年に数百回の往復が可能”というのも文字通り信じることはできません。
大気圏外に出ることができれば、そこから衛星などを放出することも考えられますが、その場合は速度を上げるためのロケットが必要です。何もしないでエレベータから出れば落っこちてしまいます。大気圏外でも無重力ではありません。スペースシャトルや宇宙ステーションの映像で、重力が無いように見えるのは、重力と遠心力が釣り合っているからです。
また、記事によれば宇宙ステーションまでの距離は約10万キロとなっており、そこまで行くとしたらもっと時間がかかるでしょう。それと上空10万キロにステーションを置くというのもどうかと思いました。設置の困難さならステーションでも単なるカウンターウェイトとしての岩塊でも似たようなものですが、もし帯状エレベーター通路が切断される事故が起きたらすっ飛んでしまう部分だからです。

リンク先は2003年の記事ですが、計画は進んだのでしょうか。


楽園の泉 (ハヤカワ文庫SF)

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