O型の血液は、どの血液型にも輸血できる?

はてなブックマークの最近の人気記事で紹介されていたhttp://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070402i101.htmの「血液をO型に変える酵素ハーバード大などが開発 科学 YOMIURI ONLINE(読売新聞)」に関して。

 米国の専門誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に1日発表する。O型の血液は、どの血液型の患者にも輸血できるため、実用化すれば、輸血用血液の血液型の偏りを解消できる可能性がある。

 赤血球の表面は、毛のような糖鎖で覆われている。その糖鎖の先に結合している糖の種類によって、A、B、AB型に分かれ、何もついていないのがO型。結合している糖の種類が違うと輸血時に拒否反応が起きるため、O型以外の赤血球は輸血対象が限られる。緊急時など患者の血液型が不明な時はO型を使う。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070402i101.htm


これを読んで思ったのは、今では違う種類の血液型からはよほどのことがないと輸血しないんじゃなかったっけというものです。O型の血液が、どの血液型にも輸血できるというのは少量の場合に限られた場合です。
ABO血液型によって違うのは赤血球の抗原の種類だけでなくて、血漿に含まれる抗体もです。O型の血液の赤血球にはA抗原とB抗原のどちらも存在しませんが、生まれてしばらくすると血漿にA抗体とB抗体が発生します。この抗体があるので、O型の人に別の血液型の輸血を行うと血液が固まるなどの問題が起きるわけです。逆に、O型の血液を他の血液型の人に輸血した場合は、少量ならば抗体が薄まって効力を発揮しないので大丈夫ということのようです。
血液型の検査にも、単に赤血球の型を判断するやり方以外に、より詳しく血清の抗体の型を検査するやり方もあって、おもて検査とうら検査のように呼ばれているようです。

つまり、リンク先の記事にあるように赤血球を処理してO型に変えることができたとしても、血漿の血液型は残るため大量の輸血には問題があると考えられます。AB型の血液を処理すれば、血漿に抗体が無いので大丈夫でしょうが、それではあまりメリットが感じられません。あとは血漿から抗体をとりのぞく方法があればいいのですが。
その他の方法として、赤血球のみを分離して人工血漿に加えるといったのも考えられます。完全な人工血液というのはまだありませんが、血漿だけならば簡易的に生理食塩水や、もう少し他の成分も加えたリンゲル液というものである程度は代用できるかもしれません。