実数の一対一対応

14日にも取り上げたhttp://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2008/01/post_35f2.htmlの『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる 数学ぎらいは幸せになれないか 「生き抜くための数学入門」』のこんな部分について。

小学生レベルの限定された数理体系しか共有していない宇宙人に、これを説明しようとすると、正しくないことを証明できないことに気づかされる。

http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2008/01/post_35f2.html


地球人でも小学生レベルの限定された数理体系しか理解していない人はいるのにと思いました。宇宙人には地球人も含まれるとすれば、論理的に間違いではありませんが。
さてそんな宇宙人もしくは地球人に含まれるであろうひとりの今回の疑問は、実数の一対一対応についてです。以下、実数の一対一対応について疑問に思う点について説明します。

まず、実数と自然数の一対一対応が出来ないことは問題ありません。しかし、ここで一対一対応が出来たとすると矛盾が生じるという考え方が影響を及ぼすことになります。実数と実数を対応させようとした場合に、どうやって対応させたらいいのかという疑問が出てくるからです。

具体的な例として0〜1の数直線に含まれる実数つまり点と、XY平面の(0,0)〜(1,1)に含まれる点を一対一対応させることを考えてみます。まず、数直線上の点である実数をa1やb1といった1桁の数字を表す変数を使って以下のように表します。

0.a1b1a2b2a3b3a4b4a5b5…


これをXY平面の座標に変換するのに以下のようにします。

X=0.a1a2a3a4a5…
Y=0.b1b2b3b4b5…

そうすると、数直線上のすべての点と平面上の点が対応できそうに思います、直感的には。でも本当に対応できるのでしょうか。
そんなこと難しく考えなくても、1個づつ順番に対応させていけばいいではないかと思うかもしれませんが、そうはいきません。順番に対応させていって全てが対応できるのだとしたら、実数を順番に並べ尽くすことができることになってしまいます。なぜそれがいけないかというと、そうしたら自然数と対応させることが出来るとなってしまうからです。

有限の数の一対一対応というのは、リンゴの数と指を折り曲げた数を対応させて数を数える場合のように日常でも使われていて、特に数学と意識することも無いほどの基本的なことでしょう。この一対一対応が、どこまでも終わらずに続くという場合を考えることで無限の場合についてもある程度想像可能です。少なくとも自然数のように数えられる無限の場合は。
それでは、実数のように自然数よりも濃度の濃いとされる無限の一対一対応はどうやってやればいいのでしょうか。単にどこまでも対応させるだけでは高々加算無限の対応しかできません。それでは非加算無限を対応させたことにならないわけです。
いったいどうやって対応させれば、全ての実数を対応させたことになるのでしょうか。それが明らかにされない限り、実数の対応というのは、有限な数や加算無限の対応からの類推による直感的な物にすぎないのではなんてことを考えたりするのです。


まあ、線と平面の対応に関しては平面を埋め尽くすペアノ曲線のようなもので説明することは出来るみたいなので、それだと大丈夫かなと思っていました。でもそれもあやしいなと考えるようになってしまった今日この頃です。長さの違う2つの線に含まれる点を比較する場合でも、個々の対応について考えるとやはり不思議です。個々の点に注目して、なおかつ全ての対応が完了したとすると、線に含まれる点を全て数え終わることができるかのように感じるからです。逆に、全ての点を対応させていないのならば、対応は不完全だということになります。